おもいでのかけら

園舎を建て替えるために園庭の南側に仮設の園舎を建て、5月に移りました。
しばらくはここで幼稚園生活をおくります。

6月に入っていよいよ旧園舎の解体が始まりました。
何台もの大きな重機で解体が進むと、
日に日に旧園舎が形を変えながら小さくなっていきました。

間近で旧園舎が壊され、整地され、新しい園舎が建てられていく。
こんな機会はめったにありませんから、目の前でその様子がよく見えるように、
子どもたちの部屋には低い窓が備えられています。

先日もその窓から、壁が豪快に崩れたり、コンクリートを大きなハサミのようなもので砕いていく様子を
「わぁっ、凄いねぇ!」と何人かの子どもたちと眺めていました。
すると誰かが後ろから“つんつん”とつつく感触が・・・
振り返ると2人の年長の女の子が手をつないで立っていました。

「ん? なぁに?」と尋ねると、やや恐る恐る、
「昔の幼稚園のかけら、もらってもいいですか?」
とのこと。

私は、
『年少から2年以上過ごした旧園舎に、とても深い愛着を抱いてくれていたんだな』
と嬉しくなりました。

しかしそれと同時に、
『きっと壊されていく様子に、小さな胸を痛めていたんだろうな』
と思ったら、
私の中に隠れていた寂しい想いも湧き上がり、目の奥から熱いものがこみ上げてきました。

『この子たちの想いに応えてあげたい』
そう思い、
「子どもが入ると危ないから、工事のない時に先生が拾っておくね」
と約束しました。

数人の先生と工事現場に探しに入り、丁度良い大きさで、
幼稚園の色の付いたものなど、旧園舎と分かりやすいかけらを拾っていきました。

何日か経って、たくさんのかけらを拾うことができた頃、
2人が職員室に取りに来ました。

「ここから好きなの選んで良いよ」とかけらの入った箱を差し出すと、
2人は目を輝かせながら駆け寄って来ました。
「これもいいなぁ!」「○○ちゃん、決まった?」と言いながら夢中になって探すことしばらく、
気に入ったかけらを手にすると、お互いに目を合わせてにっこり。

とても嬉しそうに、大切そうに職員室をあとにした2人の後ろ姿を、
きっと私は忘れません。

PS:なお、年長の先生からの提案で、年長の子どもたちはかけらを使った製作をすることになりました